Reprint from 「 a way of life」by Taku Takemura ( P-Vine Books )
Taqueria Magazineの編集者/ライターの竹村卓が2009年に出版したインタビュー集「ア・ウェイ・オブ・ライフ 28人のクリエイタージャーナル( P-Vine Books )からの転用です。
2000年代、当時ロングビーチにあった彼のスタジオ。床一面に散らばる作品。自らその上を土足でのしのしと歩く。
「僕はドジャースよりアナハイムエンジェルスの方が好きなんだ。」
アーティスト本人を知ることが、彼らの作り出すアートを深く知ることになると今まで思っていた。どのアーティストに対しても本当にそうなのだろうか?レイモンド・ペティボンと一緒の時間を過ごすたびにそう感じてならない。彼を知ろうとすればするほどペティボンの謎は深まり、いつの間にか出口の見えない彼の世界へとずるずると引きずり込まれていく。
ー最近はどうしているの?
ペティボン:最近は作品作りで忙しいんだよ。作品展があるからそれのために絵を描く毎日なんだ。たぶんね。
ーレイの描く作品にはベースボールが題材になっている物が多いよね。ベースボールは好き?
ペティボン:ベースボールは好きだよ。最近はシーズンに数回くらいしかスタジアムに行けていないんだ。テレビでベースボールがやっていれば必ず観るよ。僕はドジャースよりアナハイムエンジェルスの方が好きなんだ。同じロスアンゼルスだけれど、子供の頃からエンジェルスのファンだったんだ。住んでいるところもアナハイムの方が近いしね。
エンジェルスが始まったときのオーナーが好きだったというのもファンになった理由のひとつかな。オーナーはジーナー・アウトリーというカウボーイの映画で歌を唄ったりしていた映画関係の人だったんだ。ちょっと前にはウォルトディズニーが球団を買った事もあったんだ。そのときのエンジェルスは好きではなかったね。今のオーナーはメキシコ人の人じゃなかったかな?最近はなかなかチームの情報を追いかけている時間もないんだよ。
ー十分詳しいよね。好きな選手は誰なの?
ペティボン:エンジェルスだとヴィアディミア・ゲレロのゲームを観るのは好きだよ。彼はいつも良いプレーをするから。エンジェルス以外で好きな選手はシアトルのイチローだよ。彼のバッティングはとても魅力的だし、ほかの選手とは違う試合を見せてくれるところが面白いと思うんだ。それに試合をコントロールする力も持ち備えていると思う。走るのも速いし。
ーレイの作品のファンにはミュージシャンも多いね。ブラック・フラッグ、ソニック・ユース、フーファイターズのジャケットのアルバムワークもしているし。レイは最近どんな音楽を聴いているの?
ペティボン:今はそんなに音楽を聴いていないな。僕のアトリエは窓を開けているとクルマの騒音がひどいから音楽をかけてもよく聞こえないんだ。だから最近はどんな音楽を聴いているのかわからないよ。ラップも聴くよ。NWAとかゲットーボーイズとかね。ディステニーズ・チャイルドは聞き飽きたな。
ーアートを作る以外に興味のある事は?
ペティボン:最近はほかの人の作品展を観に行ったりする事が多いかな。でもほとんど僕はこのアトリエにこもっているんだ。時間が経つのが怖いときがある。やらなければいけない事がたくさんあるから。いつも時間に追われているような気がするんだ。時間を無駄にしているような感じがするとすごく不安になるんだ。
ー最近サーフィンはしているの?
ペティボン:サーフィンはしていないよ。竹でできたボードをもらってそれで海に行ったんだけれどすごく寒かったしボードが重くて波に乗れなかったよ。時間があればしたいんだけれどね。ロングビーチはポートだし波もそれほど良くないから。コンテナだらけだし。このスタジオの周りにはサーフィンをするようなビーチはないからね。最近は起きれば赤ワインの飲みすぎで二日酔いのときも多いし、サーフィンは簡単じゃないんだ。
ーペティボンの出身はアリゾナでしょ?
ペティボン:アリゾナ州のツーソンという街で生まれたんだ。そして2歳でカリフォルニア州、ベーカーズフィールドの近くにあるワスコという街に越したんだ。そして5歳のときにハモサビーチに移ってきたんだ。今もハモサビーチに実家があるんだ。
ー小さなときはどんな子供だったの?
ペティボン:僕は普通の子供だったと思うよ。家にいるときはよくテレビを観ていたんだ。でも外で遊ぶのが好きだったね。フットボールやベースボールをやったり、自分たちで考えた遊びをしていた。友達とお互いに泥のだんごを作って投げ合ったりしていたよ。僕が小さな頃とは変わってしまったんだ。アメリカは僕たちすべてをコントロールしようとしている。ごめん、質問の答えとは関係ないね。
ー別に大丈夫だよ。ペティボンが絵を描くようになったのはどうして?
ペティボン:子供がお絵かきや落書きをするのと同じだよ。兄貴のグレッグがブラック・フラッグを始めたからバンドのフライヤーのために絵を描いたりしていたんだ。僕が絵を描く事に理由はないんだよ。ずっと続いちゃっているだけだから。
ー作品作りのアイディアってどういうところから出てくるの?
ペティボン:どんな事に対しても気持ちをオープンにするようにしているんだ。僕の仕事はフィクションの世界だから。すべてをドキュメントする必要はないんだけれどね。毎日の生活の中で感じた事が作品に影響する事ももちろんあるしね。だからといってわざわざ外に出て興味のある事を見つけたりはしないけれどね。
ーこれからの予定は何かある?
ペティボン:ないね。僕は人生のゴールや短期間でのプランも立てないタイプの人間だから。自分のためにもならないと思うし。個展があるからそれに向かって作品を作っている毎日。それが終われば次の展示のために作品を作る。それをずっと続けているんだ。誰かが訪れたり予定がない限りはここで作品を作っているんだ。永遠に続くと思うよ。
そういえば、言い忘れたけれど僕は釣りも好きだよ。知り合いでボートを持っている人がいるから、その友人と一緒にボートに乗って釣りをするんだ。カタリナ・アイランドにも行ったりしてする。釣るだけではなくて魚を食べるのも好きだよ。寿司も好きだしメキシカンも好き。朝ご飯にはワッフルやパンケーキを食べるのが好きかな。ベーコンや卵とね。だいたい二日酔いで朝は寝ているけれど。
ーこのスタジオには人が訪れる事は多いの?
ペティボン:ここにはそんなにこないよ。人がきても面白いところではないしね。何しろ散らかっているからみんなきたがらないんじゃないかな。よくここにきてくれたね。無理してこなくても良いのに。
interview / text : Taku Takemura
Photo : Taro Hirano
Comments