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西山徹 Tetsu Nishiyama Vol. 4

ショッパー(紙袋)をなくしたことは最初の一歩だった




「子孫」と名付けられた、これからの未来を見据えたて立ち上げられたブランド「DESCENDANT」。経験を重ね、その視線もさらに先を見たときに生まれた考えを新しいブランドとして表現する。今まで自分の哲学を声にしてきた徹にとって当たり前のことかもしれない。Vol.4 最終章、新しく始まったこの時代を徹はどう見ているのだろうか?




ー俺もさ、ウェブストアで作ったものを販売したり、こうやってウェブマガジンを立ち上げたりして。周りを見渡すとみんなコロナで仕事が減ったりしているよね。こんな中、どんな仕事が本当に大切で残るのかな?って考えてみたんだよね。そうすると自給自足だったり、自分で作ったものをお客さんに直売するような職業なんじゃないかな。って思った。余計な人を通さないし、一番シンプルで重要で。自分たちで作ったものを使ってもらう人に直接買ってもらうっていい。商品と共に気持ちも伝わるし。

少し前では想像できなかったような大企業が倒産してる。でもそういう会社って実はすごく無駄やロスが多かったんじゃないかな?そう考えると、徹がやっていることも、製作側とユーザーがすごく近くていいなと思ったんだ。買う人だって作った人から直接買うことで、作っている人の気持ちも良く伝わる。今はそういう価値観で買うものを選ぶ人が増えてきてる。徹が作ったパッチワークの作品だって作り手の痕跡が直に感じられるし、そうやって商品のストーリーを聞くと欲しいなって思うもんね。同じような商品でも作る動機や思いでぜんぜん価値の違うものになるね。徹はどう思う?


徹:そうなのかもね、このパンデミックで明らかに価値観に変化がおきたよね。これまでの価値感がリセットされたね。


ー徹は「Philosophy」を立ち上げた時から、自分のことを伝えようとしてきているじゃない。だからずっとみんなが支持してくれるしさ。俺も話を改めて聞いてみたいなって思ったんだ。コロナ前、みんなでご飯食べにに行くと、基本スケボーとか音楽とかの話ばっかりじゃん。だからこう改めてさ。この一年でいろいろ変わって、この先もまだどうなるかわからないんだけれど、これから徹はどんなことがやりたいと思っている?


徹:洋服というコンテンツに何十年も関わってきたわけなんだけど、振り返ればそこにはカルチャーがしっかりとあったんだよね。だからそんなカルチャーに関わってきたことを活かして新たなフェーズでやっていきたいと思ってる。それには十分な期間はあったしね。



ーコロナになって必要、必要じゃない物事というのがはっきりしていろいろそぎ落とされたなと。今やっているお店は中目黒の「DESCENDANT」の一店舗だけなんだよね?


徹:今実店舗は中目黒だけ。ニューノーマルになるまではリアル店舗って過去二十年くらいなんの変化もなかったと思うんだけど、変化というよりも何をどう変えるのかなんて考えたこともなかったよね。だけどこうなった今は現状に合わせて変化をしていく頃合いなんだなってとても実感してる。逆に楽しみ。


ーその都度、ちゃんと立ち止まって考えてるね。震災の時はああいうメッセージを作ったり、今回もお店をたたんだり、販売方法を変えたり。大変な中でもそうやって自分で考えて行動できることが大切だと思う。あとさ、会社をやっている側として、環境のことを考えないといけないなって思うことはあるの?


徹:2014年に「DESCENDANT」をオープンした際、まずはショッパー(紙袋)をなくしたことは最初の一歩だったね。今では製品にも環境配慮や再生可能な資源を使ったり、持続可能な開発目標を掲げる項目に沿ったことにも積極的だよ。自分たちがやっていけることに関してね。


ーそういうことを含めて、会社を運営していく上で考えていかなくてはならないことになってきたよね。例えば社員の男女比だとか、福利厚生とか、モノを作って売るということ以外に考えなければいけないことがたくさんあるね。


徹:そうだね、モノを作って販売するだけとも言えるけど、それにはいろいろな人が関わってできていくわけで、それが会社だしね。その昔、まだ「パタゴニア」が一部の人たちにしか知られていなかった90年代初頭、カタログをよく見ててさ、そのころはギアが欲しくてアイテムページを食い入るように見ていたんだけど、必ずと言っていいほどその傍らには自分たちの活動に関するレポートを載せていて。川の水質を改善していなくなった魚を戻すことだったり、ダムの存在に関しての問題提起とか。いろんなことを声にしていて。

どのブランドもやっていないようなことをしているって思っていたし、今でこそこうやって言葉にできるけど、信念や哲学を持つことは、無理と思われていたことを成し遂げようとする表れにも感じていたし。振り返れば、そういうところって当時のあの頃に影響を受けてたんだろうね。「DESCENDANT」オープンする際に決めた脱ショッパーやエコバックのリリースとかに通じてたりするのかもね。



ータグの裏にも”着なくなったら捨てるんじゃなくて、お下がりを誰かにあげてね” って記載されていたり。徹が10年前からやってきていることが、いまではメインになりつつあるね。お客さんも、服選びの基準が変わってきていると思うよ。地球に優しい服作りをしているから、このブランドを選ぼうって。「パタゴニア」はああいう風にやっているでしょ?リサイクルとか、それぞれやり方があって。たぶん、ファッション業界もそういうの気にするようになっていくから。素材なに?とかどこから来た素材なのか?とか。そういう話題になってきたなって。ヴィーガンという言葉も以前より広まってきていて、でもそうではない人たちももちろんいて。生命のサーキュレーションみたいのあるじゃない?小魚がプランクトンを食べて、大きな魚が小魚食べて、それで人間がその魚を食べるみたいな。生命が共存して生きていくにはそれが不可欠だったりもしてさ。どっちも否定するわけではないけれど難しい問題だなって思うんだよね。


徹:そこは課題だよね。問題を知って考えるって大事だよね。


ーだから動物を食べるにしてもちゃんと無駄なく、美味しく頂くってことも大切なことの一つでもあるんじゃないかなって。俺の中で明確な答えはまだ出ていないけれど。そうやってヴィーガンみたいな人たちがいるからさ。みんながそういう意識ができるって言うのもあるよね。まずはそういうことを知っているということが大切なんだなって思う。


徹:知るきっかけになるね。



ー楽しそうでもあるよね。日本におけるヴィーガンってさ。まだ日本だとアングラだし、パンクとかやっている人たちがヴィーガンに走るのはアングラでいかに楽しむか?っていうのもあるんじゃないかな。ここにこんな美味しいヴィーガンのレトルトがあったとか。そういうのを発見して共有して楽しむっていうのがあるんじゃないかな。


徹:自分は魚は食べるんだけどね。外食するとさ、何を食べるのかを見つける楽しみが増えたよ。つまり肉メインだった頃はまったく考えたことなかったことだから。ほらっ、だいたいメニュー開いて上段は肉料理だから、そこしか見てなかったもんね。それが今はさ、何が食べられるのかなー?ってなってきていて、メニュー全部見てるもんね。それが楽しい。


ーカリフォルニアにロスクルードスっていうハードコアバンドがいてさ、友だちのバンドがアメリカに行ったときツアーで一緒に回っていたんだけれど、メンバーがまずみんなゲイなんだよね。それでヴィーガンでしょ、でパンクっていう、いかに今の世の中生きるのが難しいって感じがしちゃって面白かった。マイノリティー中のマイノリティーみたいな。しかもメンバーみんな移民だし。ピザも食べられないし。チーズが食べられないからね。でもそれをみんな楽しんでいる感じ。


徹:究極は木から落ちたものしか食べたらいけないっていう。木からもいでもいけない。


ーそういう人たちがそっちに走る理由もわかるね。だまされないぞって。そういう人たちがおもしろいもの作ったり、音楽を作ったり。そういう人たちがいることを知っておくのも大切なだって。

 コロナもさ、こう改めていろいろと考え直すきっかけになったような気がするよね。



徹:そうだね、このパンデミックしばらく続くだろうし、災害も多いしね。電線がネックらしいよ。海外は地中に埋まっているでしょ?地震災害とかで電信柱倒れて断線しちゃうし電気が通らなくなるからね。


ー俺たちが高校生の時にさ、友だちの上釜が割り箸を使わないって言いだして、マイ箸を持ち歩き始めたんだよね。よく考えると割り箸って間伐材使っているからあまり関係ないんだけど。彼はマジメだから自分なりに考えてやっていてさ。それから考えるとすごい進化したよね。環境問題を考えてアクションを起こしている人を初めてみたのが上釜だったな。マイ箸の上釜。


徹:このスタジオでお茶飲むときは急須で淹れて飲んでいるんだけれど、なんとなく子供の頃から染みついてるこの作法は究極だよね。急須に茶葉と湯を入れて数杯は飲めるんだから。ペットボトルをちゃんとリサイクルすることももちろんだけれど。急須や水筒を使ったり、上釜みたいに考えてマイ箸とかね。すぐにアクション起こすのはいいよ。誰かに言われる気付きもあると思うし、まわりでやっている人を参考にしたり。形から入ってもいいと思う。自然との共存や気候変動のことを、これまで以上に考えて生きていかなければならない世代がこれから大人になっていくじゃない。自分たちは同じ時代に生きる身として、親として、大人として率先して行動に移していかなければならないよね。子どもたちがどんな親父だったかを思い返した時、「地球の危機という同じ時代を共に生きてた」って思ってもらえるようなことをこれからもしていきたいなって思うんだ。



ーーー



時代が変わり、みんなの生活スタイルが変化した。僕自身日々の生活、それに合わせて視点や考え方が新しくなった。それまで顔を合わせればスケートボードの話、昔聴いていた音楽のこと、友だちとの思い出話とか。そんな話しかしなかった徹に、今までやってきたことや仕事に対する姿勢などの話を聞くチャンスもなかったたろうし、聞こうとすらしなかったと思う。昔のことを思い出しながら整理して質問に答える徹も、その話しを聞いている僕も、「今考えるとそうなのかも」と思うことが何度もあった。その当時はそこまで考えていなかったことでも、いま改めて振り返ってみるとなにやらつじつまが合う、みたいな。幼かった頃、夢中で追いかけていたモノやコト。それが今でもずっと変わらず影響しているからではないかと、インタビューを振り返って思う。新しく始まったこの時代でも、自分で考えること、その価値観を元に行動すること。「変わらないこと、変えていくこと」徹はそれを自分のやり方で表現していくんだろうな。そういう友だちと話ができて良かったと思う。




西山徹

1974年 東京出身。1993年、自分たちが着たい物をと「FORTY PERCENT AGAINST RIGHTS」を立ち上げる。その後「WTAPS」に改名。2004年にオープンさせた「Philosophy Store」のちに出版した「Philosophy Zine」では自身のバックグラウンドにも関わる書籍の販売や考えを言語化した冊子を出版し、多方面へと活動の幅を広げる。現在は「FPAR」を再開させ「WTAPS」、「DESCENDANT」のディレクターを務める。


text : Taku Takemura

photo : Taro Hirano



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