No no amigo, we are Thai.
突然だけれど、僕はチカーノカルチャーにずっと興味がある。チカーノとはアメリカで暮らすメキシコ系アメリカ人が自分たちのアイデンティティを表現する自らの呼び名。彼らはローライダーと呼ばれるスタイルにクルマを改造したり、メキシコスタイルのタトゥーを入れ、オーバーサイズのリーバイスやディッキーズのパンツに白のタンクトップにサングラスなど、独特なファッションをする。
カリフォルニア州ロサンゼルスは人口の約半数の人がヒスパニック系だ。それにも関わらず、社会ではマイノリティと呼ばれてしまうことの多い彼らが自分たちを主張するためにそんな独特のファッションやスタイルと彼らの生き方
を取り込んでいることに僕はとても興味を持ったのだ。
そしてその独特なチカーノカルチャーは日本はもちろん世界中の人たちにも認知され、彼らのスタイルに憧れる人たちがいる。タイにもチカーノに憧れ彼らのライフスタイルを取り入れている人たちがいる。あるグループと連絡を取ることガできた。話を聞かせて欲しいとお願いすると、会ってくれることになった。
バンコクのカオサンの待ち合わせに来てくれたのは「Thaino 13 Familia」 のリーダーを務めるLeng氏。彼の奥さんと若い仲間たちも連れて来てくれた。最初はその見た目で少し緊張したけれど、優しい微笑みとタイ人ならではの手を合わせる「ワイ」で挨拶してくれて、その気持ちも一瞬にして消えた。
「普段は仲間たちを集めて、みんなでハーレーに乗ってクルージングを楽しんだり、家でバーベキューやタイ料理を作ってみんなで食べるんだ。俺たちのクルーは「Thaino 13 Familia」。ThaiとChicanoを合わせてThaino。そのThainoの家族という意味を込めてそう呼んでいるんだ。
15歳の時チカーノのヒップホップを聴いて、彼らに興味を持つようになったんだ。それからファッションをまねするようにもなった。そこからどんどんとのめり込んで、チカーノの文化をもっと学びたいと思うようになった。彼らの考え方や生き方、暮らし方、大事にしていることを学んだんだ。とにかく彼らは家族や仲間たちをとても大切にする文化なんだ。
初めはたった2人で始まったクルーも今ではたくさんの仲間たちができて、今ではタイ国内はもちろん、マレーシア、シンガポールにも仲間たちがいるよ。最近はSNSなどを通してチカーノを知った若者たちが興味を持つようになったんだ。その興味の多くはチカーノファッションがきっかけだけれども、それからライフスタイルにも興味を持ってくれたら嬉しいね。
今ではたくさんの仲間たちがいる。これからの夢はまだ行ったことのないカリフォルニアやメキシコに行ってみたいね。現地の人たちと交流してもっと文化を学びたいね。俺はこのチカーノカルチャーのライフスタイルになってからさらに家族や仲間たちを大切に思う気持ちが強くなったよ。他の人たちを思いやる気持ちが持てるようになったのはとてもいいことだと思うし、好きなファッションとライフスタイルがマッチしているのは素晴らしいと思うんだ」
なるほどね、最初は彼らの見た目にちょっとびびったけれど、とても優しくて、タイの人たちが遠い国のカルチャーに興味を持ち、それを理解しようとする姿はいいなと思った。そしてカリフォルニアにいるチカーノと見分けがつかないくらい似ているのに驚いた。そして彼らがそれにタイの文化を上手に組み合わせているところもまたいい。アメリカのチカーノならジャラリとゴールドチェーンをしているけれど、彼らはその代わりプラクルアン(仏教のお守り)を身につけているし、タトゥーもチカーノスタイルとタイの伝統的な竹で入れたタトゥーが入っている。そして挨拶のときは必ず手を合わせ、ワイをしながら微笑んでくれた。
この取材した日の夜、彼らのパーティーに招いてくれ、たくさんの食事とお酒を振る舞ってくれ、また新しいバンコクの夜を楽しんだ。
文 :竹村卓
写真:呉屋慎吾 (初めて訪れたタイで、初日の撮影がこれ。おつかれさま)
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